
溺れる愛
第16章 冷雨
『それはっ…あんたが…私の弱みを…』
「どうせ別れる覚悟決めてたんなら
俺が握ってる弱みなんてゴミ同然だろ」
『そっ…うだけど……』
思わず俯いてしまった芽依に、那津はいつもの調子で
少しからかう様に口角を上げて言う。
「何?俺の方が良くなったとか?」
『────……』
彼は当然、芽依がそんな訳ないなどと言い返してくることを想定して
わざとからかったに違いない。
だけど、今の芽依にとってその言葉は真実で
否定しようもなくて
明らかに動揺して目を泳がせた後にまた俯く。
こんな芽依の様子に、那津は小さな声で
「…おい……嘘だろ…?」
『────……っ』
(何も答えられない……何て言えばいいの…っ)
答えに詰まる芽依に、那津も動揺を隠せない。
そして、しばらく沈黙が続いてから
那津が口を開いてその沈黙を破った。
その声音は、久しぶりに聴く
とてつもなく低い声で、冷たい声。
「……もう、お前の利用価値ねぇな」
『……どういう意味…?』
