溺れる愛
第3章 喪失
『え…立場って…?』
思わず条件反射のように、身体が硬直してしまう。
「いいか。お前は俺に言われた事だけしてりゃそれでいいんだよ。」
また、先ほど同様、じわりじわりと距離を詰められる。
逃げたい気持ちばかりが募っても身体が言うことを聞かない。
「俺に干渉するな。俺の事なんてお前が知る必要はないし、俺もお前の事なんて知るつもりもない。」
那津の指が芽依の首にそっと当てられる。
(…っ)
「これはただのゲームだ。お前は俺に弱みを握られて逆らえない。
俺はお前を好きなように利用するだけ。
嫌なら逃げればいい。でも、もしそんな事したら…」
首に当てられていた那津の指が、スッと横に切るように動かされる。
「ゲームオーバー。お前は一生犯罪者の名を背負って生きていくだけだ」
そう話す那津の目は、今までよりも更に冷たかった。
『……っ』
息をするのも忘れるくらい、恐怖と混乱で那津の冷徹な瞳から目が離せなくなる。
見開かれた芽依の目にはうっすらと涙が滲んだ。