溺れる愛
第17章 社会人編スタート
───────…………
「先輩、本当に手伝わなくていいんですか?」
菜々子ちゃんが心配そうに見つめてくる。
今、時計は午後8時を指していて、逆にここまで残業させてしまった事が申し訳ないくらい。
『えぇ。あとは私一人で大丈夫だから。
遅くまで本当にありがとう。
気を付けて帰ってね』
にっこり微笑むと、菜々子ちゃんは少しだけ申し訳無さそうに頭を下げて
「じゃあお言葉に甘えて…先輩も帰り、気を付けて下さいね」
『ありがとう。お疲れ様』
「お疲れ様でした」
菜々子ちゃんが帰って、広いデザインチームのオフィスには
私一人だけになってしまった。
資料を見ながら頭に空間をイメージして
そこに家具や機材をはめ込んでいく。
ある程度固まったらラフにして…
そこでまた固まったら今度はしっかりとデザイン画を仕上げる。
この作業がかなり難航するのだ。
普段ならそうでもないんだけど、大きな仕事ってだけで力が入っちゃって
なかなか良いイメージが浮かばないんだよね…
『少し休憩しようかな…』
私は奥にある給湯室へ行き、インスタント珈琲を淹れて
それをチビチビ飲みながら自分のデスクへと戻った。