溺れる愛
第18章 久しぶりのときめき
田所さんがスマートにオーダーを済ませ、私は全て彼にお任せした。
そしてしばらくして店員さんがワインボトルを持ってきて、グラスに注いでくれる。
「では、今後もふたばデザイン事務所さんとは良いお付き合いが出来るように…乾杯」
『…乾杯』
キン…とグラスがぶつかる上品な音がして
私はその赤ワインを少しだけ口に含んだ。
「ここはワインも美味しいし、料理も絶品なんですよ」
『そうなんですか。
こういうところ、よく来られるんですか?』
動作の一つ一つに慣れを感じる。
きっとこんな高級レストランでも、田所さんにとってはラーメン屋くらいの感覚なんだろうな。
私じゃ考えられないけれど…
「まぁ接待などでしばしば利用する程度ですよ」
にっこりと微笑む女顔の田所さん。
目もくっきり二重に、色素の薄いサラサラの髪。
一見ハーフにも見えなくはない。
あ、もしかしたら本当にハーフなのかも。
それなら納得のいく顔つきをしていらっしゃるわ。
『私は…こういうところは滅多に来れないので
今も少し緊張しています』
「ふふ…素直な方ですね。新井さんって」
『あ、すみません…失礼な事を…』
もしかしたら嫌味っぽく聞こえちゃったかしら…
まぁでも、仕方ないわよね。
本当の事なんだから…。