溺れる愛
第18章 久しぶりのときめき
すると、田所さんはテーブルに両肘を付き、顎の前で手を組むと
そのまま、また探るような瞳でこちらを見つめてくる。
『…あの…?』
「一つ提案なんですが…、せっかく同い年なので
仕事の時は別として、プライベートでは敬語を使わず普通に会話しませんか?」
『え…?』
プライベートではって…
確かに同い年ではあるけれど、田所さんは大事なクライアントの担当者であって
私と友達ではない。
そんな人に、いくらお願いされても今すぐには
そんな風に接する事なんて出来ないわ…。
それに、私はそこまで偉くもないし
ただの一社員なのだから、尚更出来ない。
『あの…それは出来かねます。
たとえ同い年と言っても、私は田所さんにそんな態度を取れるほど偉い人間でもありませんし…。』
「僕が…どうしても、と言っても?」
まだ何かを探っているような目つきに
無意識にゴクリと息を呑んでしまう。
『はい…今すぐにという事であれば…
私には出来かねます…』
もう少し、本当に会う回数を重ねたらまた別の話だけれど
仕事関係の人で、しかも男の人となんて仲良くなる気は最初から無いのよね。
面倒は避けたいから…。
すると田所さんはクスッと笑って、組んでいた手をほどき
そのまま頬杖をついて上目遣いにこちらを見てくる。
な、なんかキャラが変わった…?
内心どぎまぎしていると、田所さんの口から信じられない言葉が放たれる。
「ふーん…俺の想像を上回る女で少し安心した。
簡単に男に靡く様な奴じゃないって事は充分わかったよ」
お、俺って…さっきまで僕って言ってなかった?
それに女とか男とか…口調がまるで別人…
「これなら…まだまだ見込みはありそうかな。
これから益々面白くなりそうだよ、芽依チャン」
『めっ、芽依ちゃんって…』
何を言っているの?この人は…