溺れる愛
第18章 久しぶりのときめき
その日は家に帰ってからも、田所さんの意味深発言が頭から離れなかった。
仕事をしながらパソコンの前で、さっきからそればかりが頭を占めていて、気がついたら手が止まってしまう。
『私の知りたいことって何だろう…』
私が知りたいのは……
那津が今どうしているかくらい。
『まさか…那津を知っているの?』
そう言えばレオンの話をしてた。
でも、まさか………まさかね…。
そして、また仕事を再開する。
だけどなんとなくはかどらなくて
結局、せっかく家に持ち帰ったのに
仕事の気分ではなくなって、パソコンの電源を落としてしまった。
そして考えはもう一つの事へ…。
八年ぶりに出版される那津の本。
どうして今までレオンを覚えていなかったの…
そもそもこれのために協力しろって最初に言われたのに。
あの頃は、ただただ那津のする事全てが
私にとって精一杯で、すっかり忘れてた…。
明日はそれの発売日らしい。
『今までのも合わせて…買ってみよう』
那津がどんなものを書いているのか…
女性に大人気だなんて、あの那津からは想像もつかないけれど…
いつも、あの無表情の奥にどんな感情を秘めてたの?
少しは…解るのかな。
その日は少しだけワクワクした気持ちで眠りについた。