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溺れる愛

第20章 近付けた喜びと陰




『ブラックで良かったんだよね?』


珈琲を淹れたマグカップをテーブルの上に差し出すと
那津は少しだけ笑って


「さんきゅ…」


って言った。


笑った…

あんなに笑わなかった那津が

今、笑ったよ…。



「ていうか、お前なんでスーツなの?」


『え!?えーっと…それは…』


だって可愛らしい服なんて持ってないんだもん!

一番マシな格好っていったらスーツしか思い浮かばなくて…

さっきまではパーカーにジャージ姿だったし
そんな格好で会えないじゃない…。


『服とか…あんまり持ってなくて…。
これが一番マシというか…』


「別に、どんな格好してても気にしねぇよ。
自分の家なんだから好きな格好しろよ」


『…そうだよね…』


それは出来ません!!

好きな人の前では…可愛く居たいって

女の子ならみんな思うよね?


「なぁ…」


『何?』


「髪…下ろして」


『髪?』


「うん。俺…お前の長い髪、好きだったから」


『…そ、そう…?』



好きだったとか!

さっきから何なの!!


心臓が持たないよ…っ



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