
溺れる愛
第20章 近付けた喜びと陰
言われるがままに、後ろで纏めたピンを外して
腰より少し上の長い髪が肩からパサッとこぼれる。
「あー…うん。その方が好き。
俺の前ではそうしてて」
もう…死んでもいいかも…なんて
本気で思ってしまうほど
那津の表情が優しくて…
俺の前ではって…なんか特別みたいでむず痒い気分。
「すげぇサラサラだよな。昔から思ってたけど…」
『そ、そうかな…?』
「うん…綺麗な髪してると思う。
染めたことねぇんだろ?」
『うん…ないよ…』
すると、那津が少しだけ腕を伸ばして
私の横髪を人差し指で掬った。
─────っ!!!
「やっぱり…いい匂いする…。
これ、すげぇ落ち着く…」
な、な、な、何なんですかこの状況はーーー!!!
今、私絶対顔赤い!!
有り得ないくらい手汗かいてるし!!
私は全然落ち着きませんけどーーー!!!
でも、那津は本当に落ち着くようで
私の髪の毛を指で遊びながら
少し伏し目がちにそれを見つめて、穏やかな表情を浮かべていた。
