溺れる愛
第22章 あの頃の君は
『やっ…あの!ほら!冗談よ、冗談!』
焦って取り繕う私に、那津は穏やかな表情で
「住みたかったら、本当に住んでもいい」
なんて言っちゃうの…。
そんな事言われたら…本当に住んじゃおうかなって
気持ちが揺らいじゃうよ。
「なぁ…ちょっと飲み直さねぇ?
芽依と酒飲むなんて、なんか新鮮だし」
『あ…そうだね。ふふ、なんだか変な感じね』
「じゃあちょっと待ってて。用意するから」
そう言って、那津はガラステーブルの上に
ワインボトルとグラス、チーズなどの簡単な肴を用意してくれた。
那津の家の照明は少し暗くて、
なんだか大人な雰囲気が漂う中
キン…と上品な、グラスのぶつかる音が響いて
私達は静かに乾杯した。