テキストサイズ

溺れる愛

第22章 あの頃の君は




「俺さ……さっき本当は
誠司の事殴りそうだった」


『…え…?』



那津は、片膝を立てて、そこに腕を伸ばして
遠くを見つめながら静かに話し出した。



「何やってんだって思って……
芽依の事になると、昔から本当余裕無くなる」


『そうなの…?あの頃はそんな風には見えなかったけど…』


「必死だったんだよ…気持ちを抑えるのに…。」


那津は、腕を伸ばした先に持つグラスをくるくると傾けながら
どこか苦しそうな表情をしていて

なんだかそれが、凄く私の胸を締め付けた…。



「芽依……ちゃんと話すから…
訊いてくれるか…?」


多分、色々思うことがあったんだろうな…。

だけど、それでもこうして私と向き合う道を選んでくれた事が嬉しいから…

どんな事を言われても受け止めよう…。



『うん…。話して…?』



それから、那津の少し長い話が始まった。



私は、聞き終わるまで、一言も口を挟まなかった。



ううん…挟めなかったんだ。

あまりの衝撃に…。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ