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溺れる愛

第22章 あの頃の君は




おっさんが

“言葉に出来なくても、こうして文字で伝えられる。だから私は書き続ける。
伝えたい相手がいるからね”


そう言って、俺の頭を撫でてくれる。

それがなんだか父親の愛情みたいで…
俺は本気でそこに住みたいと思ってた。


だけどそんな事は叶わなくて

すぐに義母に目をつけられた。
あいつは俺の幸せを絶対に許さないから。


そして、あいつはおっさんのアパートに乗り込んできて

誘拐で訴える

なんて言い出すから

俺は、またコイツに大事な物を奪われる。

そう思って必死になって抗議した。


でもダメだったんだ…。

所詮子供じゃ何も出来ない…。

世の中金と力のある奴の言うことを訊くしかないんだって思った。


おっさんは泣きじゃくる俺に優しく笑って
また頭を撫でてくれて


泣くな。笑え。
お前はもう、俺の息子だろ?


そう言ってくれて、俺はもう泣くしか出来なかった。


俺のせいで、おっさんにも迷惑をかけてしまった。


結局おっさんはアパートを引き払わざるを得なくなって

今はどこにいるのか…

生きているのかすらもわかんねぇんだ…。


俺は益々絶望したし、義母を…親父を憎んだ。

姉ちゃんとも段々話す事も減って


姉ちゃんは、16歳になって
かずさんと一緒に駆け落ちしたんだ。


泣きながら、1人にしてごめんって
何度も俺に謝りながら出て行った。


正直…どうして俺も連れて行ってくれないんだって
心の底から思ったよ。

でも、まぁ今考えたら無理なのも理解できるけどな。


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