
溺れる愛
第24章 少しずつズレる歯車
『いえ…初対面だと思いますが……。』
「そうかしら…どこかでお会いした様な気がするのだけれど…」
彼女は納得のいかない様子で私をまじまじと見つめてくる。
冷や汗が止まらない。
早く…ここを去らないと…!
『あの…私、まだ仕事がありますので、これで…』
「あ…、そうですね。それでは…」
「………。」
那津に見送られながら逃げるようにその場を去る。
彼女の鋭い視線に身体が思うように動かない…
どうして?
まだ連絡を取り合う様な仲だったの?
そんな気持ちもあるけれど…
でも、私は那津の言葉を信じてる。
那津の気持ちを信じてるから…。
大丈夫だよね?
もう…離れたりしないよね…?
漠然とした不安から身体が震えるけれど
もつれる足でなんとかその場を離れた。
