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溺れる愛

第24章 少しずつズレる歯車




走ること数十分…車は夜景の綺麗な小高い丘の上に停まった。



「ここなら…ゆっくり話せるかな」



田所さんはうんと伸びをしながら運転席のシートにもたれかかる。

私は、しばらくフロントガラスから覗く
目の前の綺麗な夜景を見つめていた。



「芽依……」


『…どうして今、呼び捨てにするんですか…』


「んー、なんとなく…。寂しい?」


『……どうして…そんな事訊くんですか?』


「那津のこと…。信じ切る自信ある?」


そう問われ、思わず田所さんに視線を移すと
彼はハンドルにもたれながら、私を探るように見つめていた。



自信……あるって…言い切れるのかな…。


本当は今日1日だけでも心が折れそうだった。
ううん…もしかしたら何度か折れたかもしれない。


だけど、今は那津の言葉を信じるしか出来ないから…。



『私は……目で見たものだけが真実だとは…思っていませんから…。』



八年前の、無表情でぶっきらぼうで冷徹で……
乱暴で酷かった那津。

だけど心は違った。


心では……私を愛してくれていたから…。



『だから私は、自分の肌で感じたことを…
自分の信じた事を最後まで信じます』



これは本心だった。


だけど、田所さんは


そんな私の心の中を掻き乱すかの様に


低い声で私に告げた。




「もし…那津があの女と結婚するとしても?」



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