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溺れる愛

第24章 少しずつズレる歯車





………結婚……?



「あの二人、正式に婚約発表をするみたいだよ」



正式に……婚約発表………?



驚きの余り声を出せない私に

田所さんがまた、切ないような、苦しそうな表情で告げる。


「それでも…那津のこと、想い続けられる?」



『………っ』



わからない。


何を言われているのかわからない。


結婚?

婚約発表?


あの人と?


破談になったんじゃないの?


信じて欲しいって…

気持ちはお前にあるって…


自分は違う人と結婚するけど、私を愛してるって意味なの…?



『……そんなの…信じられません…』


「そうだね…。でも、残念ながら本当なんだよ…」


どうして…



『どうして…どうしてそれを
わざわざ私に言うの……』


激しい動揺と混乱から、敬語を使うことすらも疎かに、揺れる瞳で田所さんを睨む様に見つめる。


「…知らないまま、発表の日を迎えたとき
一番傷つくのは芽依だと思ったから」



また……芽依って呼ぶのね…。



『…それは…いつですか…』


「来月の5日」


『…てことは…あと、一週間…』



あと一週間経てば…那津は正式に

あの人と婚約を結んで、ゆくゆくは結婚をする。


そんなの…信じられないよ…。


嘘だよね?


田所さん、悪い冗談を言って

私をからかっているだけだよね…?


那津………。



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