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溺れる愛

第25章 引き裂かれる二人




「ねぇ、あなた。明日は何か予定はあるの?」


『え…?』


「実はね、明日、私達の婚約披露パーティーがあるの!
それにあなたも招待したいんだけれど、どうかしら?」



彼女は満面の笑みで問いかけてくるけれど
その目は笑っている様には見えない…。



するとそこに、偶然なのかタイミングを見計らった様に田所さんが現れた。



「へぇ、そんなのがあるんですね。
僕も参加してもいいですか?」


「あら、那津さんからお聞きになっていなかったんですの?」


「ええ、初耳です」


「まぁ。那津さんったら照れているの?
いいわ、あなたも是非いらして」


「ありがとうございます。
そうだ。新井さんも一緒に行きましょう」



え……嫌よ…行きたくない…。



『あの…私は……』


「せっかくですし、行きましょうよ!
美味しい料理も沢山あると思いますよ」



そんなのどうだっていい…。

どうして田所さん…わざわざそんな所に私を行かそうとするの?


私の気持ち、解っているくせに…。



「大丈夫。僕が着いていますよ。
心置きなく二人を祝福して差し上げましょう」



そう言った田所さんの瞳の奥が、なぜだか妖しく光った様な気がして…。


もしかして…何か企んでいるの?


そんな風にさえ思ってしまった。


私が答えられずにいると、今まで黙っていた那津が
低い声で私に話しかけてきた。


それは、あの電話以来で…


それだけで、なんだか泣きたくなった。



「新井さん…是非、来ては頂けませんか?」



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