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溺れる愛

第26章 選択肢は一つ




「なんですって…?」



私の返事を聞いた義母は、明らかに顔つきが変わった。


怯んじゃいけない。


絶対…守ってみせる…。



『聞こえなかったかしら。
私はそんな誘いには乗らない。

だけど、あなたの好きなようにもさせない。

私が那津の弱味になる?

そうかもしれない。
だけど、それなら私は那津の側を離れたっていい。

那津を…那津の笑顔を守れるなら

私はどうなっても構わない』



言葉を詰まらせたら、もう迫力に負けそうだった。


だから私は、一気にまくし立てる様に話した。



『那津がこの八年間で手に入れた
大切な仲間や会社…それに那津自身の幸せを

たとえお義母さんでも

奪うことは許さない!
そんなこと、私がさせない!』



根拠も手段も何もないけれど、

私はそう叫んだ。



それが、本心だったから。



すると、黙って聞いていた義母がスッと立ち上がり

鋭い目つきで私を見下ろした。



「やっぱり…庶民の馬鹿とは話にならないわね。

そんな戯れ言、言っていられるのも今だけよ」



コツコツとヒールの音を鳴らして

背を向けて遠ざかっていく。



「あんたたち。

やっておしまい」



そう合図を残して


義母は薄暗い倉庫を立ち去った。



これでいい。


私は間違っていない。


だって、私は那津を…


心から愛しているから。



今度は私に

あなたを守らせて。




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