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溺れる愛

第26章 選択肢は一つ




誰…?


そう思っていると、男の1人が慌てて銃を下ろして頭を下げた。



「て、輝之坊ちゃま!!」


その名前に全員が反応して、ビシッと頭を下げて


「申し訳ございません!!」


と、銃口を向けたことを謝罪した。




輝之…どこかで聞いた名前…。

あ、そうだ!


那津の義理の弟さん…。



輝之は真っ直ぐに私に向かって歩いてくると

半分脱がされていたドレスを
綺麗に直してくれた。



「申し訳ありません。
母がこのような手荒な真似をしてしまって…。」



那津とは似ても似つかない顔だった。

その時に思ったんだ。


那津はたぶん、本当のお母さんに似ているんだ。


だからたぶん、義母は余計に那津に執着するんだと…。



那津の話に聞いたような刺々しさは

今目の前にいる輝之からは感じられない。



「おい。縄を解け」


「し、しかし…これは奥様の命令で…」


「構わない。全ての責任は俺がとる。
いいから早く縄を解けと言っている!」


「は、はいっ!」



そして、堅く結ばれていた縄がナイフで切り落とされ

私の両手は自由を取り戻した。



『あの…どうして………』



あなたも義母側の人間じゃないの…?



すると輝之は、自分の着ていたスーツのジャケットを
私の肩にそっとかけてくれた。



「間に合って良かった…。」



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