
溺れる愛
第27章 始まりのさよなら
「芽依……芽依………」
ただ、名前を呼ぶしか出来なくて。
すると、芽依は横たわったまま
震える小さな声で俺を呼んだ。
『…那…津……?』
その瞬間、俺は男の手を振り解いて
一目散に芽依に駆け寄って、その身体を抱き上げた。
「芽依…ごめん……ごめんな……」
メイクもボロボロで、綺麗な髪も乱れていて、
綺麗だったであろうドレスも、見るも無惨に引き裂かれていて…
芽依は、涙を流しながら俺を見つめた。
『……那津…私……』
「いい…!何も言うな…!」
ギュッとその華奢な身体を抱き締めると
芽依の身体は酷く冷たくて…。
俺は、悔しさとふがいなさと…
何だかよく解らない感情でぐちゃぐちゃで
自然に涙が溢れた…。
