テキストサイズ

溺れる愛

第27章 始まりのさよなら




抱き締めた俺の腕の中で、芽依が小さく身じろいで

俺の胸をそっと手で押した。


まるで、退ける様に。



「………芽依…?」



『…………』



芽依は、しばらく俯いていて

俺は、ただただ困惑していた。



そして、そこにいた皆が黙って見守る中、
芽依が長い沈黙を破った。


俺の好きな、少し高い

小さいけどよく通るその声が

ゆっくりとした話し方で。



『…はぁ……もう、疲れた…』



「…っ……」



“疲れた”



そのたった一言が


俺の心臓を抉る。



喉に何かがつかえて、声が出ない。




『…もう本当に……勘弁してよ…。
どうして私がこんな目に遭わないといけないの?』



芽依は、ヨロヨロと立ち上がると


今まで見たことも無いような冷徹な表情で

混乱で動けない俺を見下ろした。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ