溺れる愛
第27章 始まりのさよなら
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私は、輝之さんとの打ち合わせ通り
倉庫の近くの物陰に隠れていた。
そこに、輝之さんがコソッと顔を出して
着替えを手渡してくれる。
流石にこんなビリビリのドレスでは帰れないから…。
こんな見え透いた芝居
たぶん那津にはバレなくても、田所さんにはバレてそうだな…。
用意して貰った女性用のスーツに身を包んで
近くで待ってくれていた輝之さんに
私は深々と頭を下げた。
『ありがとうございました…無理な協力をして頂いて…。』
「いえ、そんな…。
だけど本当に、これで良かったんですか…?」
『ええ…。私は、那津が幸せなら
どんな形であれ受け入れます…。』
「でも義兄さんは、たぶん
あなたさえ側に居れば、それだけで幸せだったはずです」
『……でも、それは本当の幸せでは無いと思うから…。
那津とあなたが本当の意味で
お義母さんを含めて家族になれた時が
その時こそ、本当の幸せが訪れると思うから…。』
だったら私は
いつまでだって待っていられる。
八年も待てたんだから。
この先一生だって
那津を思い続けていられるわ。
私の目から、その意思の堅さを汲み取ってくれたのか
輝之さんはそれ以上何も言わなかった。