溺れる愛
第27章 始まりのさよなら
「…必ず、あなたの期待に添えられる様にします。
あなたは本当に良い人だ…。」
『…どうか、那津を…
宜しくお願いします…。』
私はまた深々と頭を下げて、輝之さんが用意してくれた車に乗り込んだ。
私は、輝之さんにあるお願いをした。
私が襲われた様に見せかけて欲しいと。
私は那津を嫌いになったふりをして
そのまま離れるからと。
そうでもしないと、那津はたぶん
納得してくれなかったと思うから…。
そしてこの事は、絶対に那津には秘密だと約束してもらった。
那津が、憎むことで楽になって欲しい
そう言っていたのを思い出した。
そして、今度は私も同じ手を使って
那津に楽になって欲しかった。
ごめんね…。
私、バカだから…
こんな方法しか思いつかなかった…。
だけど私のせいであなたが傷つかずに済むのなら
たとえ嫌われたって構わない。
私の好きな、あなたの笑顔を
私が奪ってしまう事を考えると
嫌われた方が何倍もマシよ。
後悔はしていない。
今度は私が
あなたを守る番だから。