溺れる愛
第4章 混沌
『はっぁ…ん…』
長いキスの途中、お互いの息がこぼれる。
静かな倉庫内でその音は余計に大きく耳に響いた。
「…もっと、こっち来て」
一瞬唇が離れて、今度は身体ごと那津の方へと強引に向けられると、片方の手は壁について
もう片方の手で芽依の肩を抱いてまた唇を塞がれる。
(なんで…こんなキスするの…?)
一瞬目が合った那津の顔は普段通り無表情で気持ちは汲み取れない。
だけどこの熱いキスが、なんだか那津の気持ちそのものの様な気がして
芽依は少しの抵抗で那津の胸に手を添えながらも
そのキスに必死で応え続けた。
『ふっ…ぁ…』
チュッと音を立てて離れた唇がキスの終わりを告げて
芽依は乱れた息を整えながら那津を見た。
(何考えてるの…?)
那津はまたあの冷めた顔をしていて
どれが本当の顔なのかわからない。
「何その顔。そんなに良かった?今のキス」
『んなっ!違うっ…!』
思わず顔を手で覆うと、那津はまた少し笑って
「気の強いペットは少し優しくしてやるとすぐなびく」
一際冷たい声音で呟いた。
(今…何て…?)
恐る恐る手をどけて顔を上げると、そこにはまたあの計り知れない闇を携えた様な顔で
「案外簡単だな。お前」
(…!!!)