溺れる愛
第28章 あなたの深い愛に溺れていたい
「俺さ、芽依がさよならって言ったとき
もうなんか目の前が真っ暗で…どうしていいかわかんなくなった」
隣同士、肩を並べて座っていて
那津は下を向きながら手に持ったワイングラスに目線を落として話し出す。
「身体…震えてきて、追いかけたいのに動けなかった」
『…うん……』
しばらく間が空いて
那津が消え入りそうな程に小さな声で呟いた。
「もう……離れないでくれ…」
空いた方の手をギュッと膝の上で握って
どこか苦しそうに話す那津を見て
私は、なんだかわからないけれど
涙が出そうになった。