溺れる愛
第28章 あなたの深い愛に溺れていたい
よく考えれば…
那津は小さな頃からいつも
大事な人が去っていってしまう人生を送ってきている。
お母さんが死んでしまって…
公園で出会ったおじさんもどこかへ行ってしまって
波瑠さんも出て行ってしまって…
今度は私が去ろうとした事が
那津はとても耐えきれなかったんだ。
愛に飢えて生きてきて
やっと掴んだ幸せも、どこかに行ってしまう。
それがとても怖かったんだ。
ずっと
今まで長い間
頑張ってきたんだね…。
私は、膝立ちをして那津の頭に手を伸ばして
ギュッと抱き締めた。
『もう…大丈夫だから…。
私がずっと側にいるから…。』
その言葉を聞いて、那津の身体が少しだけ震え出して
彼は涙声で
「………うん…」
とだけ呟いた。