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溺れる愛

第29章 エピローグ




声のした方を向くと

輝之さんと寄り添うようにして立つまりあさんが
うっとりする程に綺麗な出で立ちで微笑んでいた。


「義兄さん。来てくれたんですね」


「ああ。おめでとう」


『あ…この度は、おめでとうございます』



那津がお祝いの言葉を述べて、私もすぐに慌てて頭を下げた。



「ありがとうございます。
芽依さん、あの時はごめんなさいね」


まりあさんが本当に申し訳無さそうに私の手をとって、ギュッと握りしめてくる。



『あ…いえ…大丈夫です』


「お詫びとしては何だけど、何かお困りの事があれば、私に出来る事なら何でも協力するわ」


『いえ、お気持ちだけで……』



私がぎこちなく対応していると、那津がそっとその手を解いて



「まだ挨拶まわりが残っているから。
ここら辺で失礼するよ」



そっと腰に手を回されて

それだけで私はどこか安心して立っていられた。



隣に立つ那津の顔を見上げると、那津も私を見ていて

クスッと微笑み合う。


くすぐったい様な、そんな感覚が胸の内を占めていて。


気がつけば最初に感じていた緊張も解けていた。



そこに、厳格な声がかかり
今度は那津が少しピクッと震えて

その声のした方を向くと

恐らく那津のお父さんと、あの義母の姿があった。



「…久しぶりだな」



第一声を放ったのは那津のお父さんだった。



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