
溺れる愛
第29章 エピローグ
その声に、那津はビシッと頭を下げて
「お久しぶりです」
と言ったので、私も慌てて頭を下げた。
「君が那津の…」
お父さんが私をしっかりと目線で捕らえて
まじまじと見つめて来られる。
『初めまして…新井芽依と申します』
もう一度深々と頭を下げて挨拶すると
少しだけ柔らかい雰囲気になった義母の声がかかった。
「お久しぶりね。顔をお上げになって」
『…はい…』
しばらく気まずい沈黙が流れていたけれど
見かねたまりあさんが助け舟を出してくれた。
「あ、そうだわ芽依さん。これをあなたに差し上げようと思っていて」
『え?これは…ブーケ?』
「そうなの。挙式の時にブーケトスはせずにとっておいたの。宜しかったら頂いてもらえないかしら?」
『え…でも…』
戸惑って、那津の顔を見ると
那津はフワッと優しく笑って
「貰っとけば?」
と一言。
私は少しだけ恥ずかしい気分でまりあさんからブーケを受け取った。
『ありがとう…ございます』
