溺れる愛
第4章 混沌
だが、唇や首筋に那津の余韻がまだ残っていて。
(…夢じゃないんだ…。)
嬉しい日でもあり、嫌な日でもあり
気持ちは沈む一方だった。
画面の中の先輩を見つめながら
また目に涙が浮かぶ。
(私…いつあいつから解放されるの…?)
考えないように。そう思っていても
やはり先輩への気持ちが募れば募るほど頭の中はそれでいっぱいになる一方だった。
(今以上の事を要求されたら…私…)
那津のあの冷たい目が頭に浮かぶ。
だが、すぐにネットを代わりに取り付けてくれた時の顔も浮かんで
あの熱くて優しい声音を思い出してしまって
まるでそれに自分が期待しているみたいな、そんな感覚にげんなりしてしまう。
(私って、こんなに単純だったんだ…)
首まで絞められたのに。
少し優しくされただけで、全部を許してしまいそうだった。
(助けて…先輩…)
静かに涙を流しながら、画面の中の先輩に心の中で話しかける。
その時、突然ガラッと教室のドアが開かれた。