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溺れる愛

第6章 変化





─────……




夕暮れの通学路を、大きな影と小さな影が
夕陽に拡張されて寄り添うように歩いている様に見える。


実際は芽依が少し前を、那津がその後ろを歩いていた。



『ほんっと有り得ない!!』


「そんな事言ってるけど、お前だって良さそうだったじゃん。実際イってたし?」


『いちいちそーゆう事言わないで!!!』



先程からずっとこの調子で
不運にも帰り道がほぼ一緒な2人は
渋々という感じで一緒に帰っていた。



『もう学校であんな事しないで!』


「あんな事って?」


しれっととぼける那津に更に苛々が増す一方で。



『あ…あんな事って言ったらあんな事よ!!』


(恥ずかしくて言えるわけないじゃんっ)


依然怒る芽依と対照的に那津はどこか楽しそうに
意地悪く笑っていた。



「嫌がる事する方が俺は燃える」


『もっ、燃えっ!?燃えなくていい!!
いやむしろ燃えちぎって灰になればいい!』


「意味わかんねー」



最終的にはこいつの思い通りになっていく。
そんな風に心のどこかで自覚していた芽依には
焦りと羞恥を隠すためにも怒るしか出来ない。



(こんなとこ…先輩に見られたらお終いだ…)



極力偶然を装えるように、距離をとって歩く。


そんなヤキモキも意味を成す事はなくて
その日は無事に家に帰り着いた。




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