テキストサイズ

溺れる愛

第6章 変化





次の日、土曜日なのに制服を身にまとって出て行こうとする娘に
母は怪訝な顔をしてきたけれど
“勉強”と一言嘘を言ってしまえば
手作りのクッキーを持たせて喜んで送り出してくれた。



(お母さんごめん!!)



心の中で謝罪をしながらも、身体はウキウキが止まらない。
スキップなんてしたりして
弾む気持ちを抑える事が出来ない芽依は
終始ニヤニヤしながら学校へと急いだ。



休日の学校は、部活動の生徒がちらほら居るだけで
普段の騒がしさは無く、のどかな空気が流れていた。


(今は…12時半か…。早く来すぎちゃった…)


浮かれ気分を落ち着かせるためにも
校舎をぷらぷらと歩きながら妄想を膨らませる。



(あとでこのクッキー先輩にあげよう。)


────ありがとう、嬉しいよ。芽依ちゃん────

にっこり微笑む先輩を思い浮かべて
また目尻がくしゃっと垂れ下がる。



(こんな感じかなー!?あーもー早く会いたいけど恥ずかしいよー!!)



一人でジタバタとしながら校庭のフェンス沿いを歩いていると
後ろから微かに笑い声が聞こえてきた。


『…っ?』


何の意識もしないで、そのにやけた表情のまま振り向くと
そこには体育館の外壁を背もたれにして立つ
長身の爽やかな、あの先輩──俊哉が笑顔でこちらを見て居た。



(────!!??)



ストーリーメニュー

TOPTOPへ