夏のシュークリーム
第1章 会えない日のお客様
「今日も会えない、か…」
窓から顔を出して空を見上げれば、彼の気持ちをそのまま映し出したかのような曇天の空。
しかしそれはウンザリする程長く続く、夏の暑さを和らげているようでもある。
「今日は昨日に比べたら過ごしやすいね」
冴木ミカはすぐ隣を歩く、恋人の倉田次朗に語りかけた。
ミカは、軽い素材の、シヤーベットブルーが涼しげなワンピース着ている。
一方の次郎は相変わらずの全身真っ黒な出で立ちが見た目にも暑苦しい。
「そうだね。いくらかマシかも。昨日も一昨日も、蒸し風呂に入ってるみたいだったもんね」
次郎はそう言うと、手の甲で額に浮かんだ汗を拭った。
「黒以外も着てみたら?小学校の理科の授業で習ったでしょ。黒い服は太陽の熱を一番よく通すんだよ」
「この色が一番落ち着くんだよ。制服にもやっと慣れてきたんだよ。」
二人は一応、高校生だった。
『一応』と言うのも、実はこの次郎という男、少し訳ありで、本当は高校生と呼べる一般的な年齢は遥かに超えていたのだ。
二人は一件の家の前で、足を止めた。
次郎が先立ち、門を抜け、玄関の前に立つ。
戸を開けようとした手を、思い出したようにインターホンに持って行く。
ピンポーンと、珍しくない音が玄関の向こうで聞こえたかと思うと、間もなく彼が、この家に現在一人で暮らす松井太郎が現れた。
窓から顔を出して空を見上げれば、彼の気持ちをそのまま映し出したかのような曇天の空。
しかしそれはウンザリする程長く続く、夏の暑さを和らげているようでもある。
「今日は昨日に比べたら過ごしやすいね」
冴木ミカはすぐ隣を歩く、恋人の倉田次朗に語りかけた。
ミカは、軽い素材の、シヤーベットブルーが涼しげなワンピース着ている。
一方の次郎は相変わらずの全身真っ黒な出で立ちが見た目にも暑苦しい。
「そうだね。いくらかマシかも。昨日も一昨日も、蒸し風呂に入ってるみたいだったもんね」
次郎はそう言うと、手の甲で額に浮かんだ汗を拭った。
「黒以外も着てみたら?小学校の理科の授業で習ったでしょ。黒い服は太陽の熱を一番よく通すんだよ」
「この色が一番落ち着くんだよ。制服にもやっと慣れてきたんだよ。」
二人は一応、高校生だった。
『一応』と言うのも、実はこの次郎という男、少し訳ありで、本当は高校生と呼べる一般的な年齢は遥かに超えていたのだ。
二人は一件の家の前で、足を止めた。
次郎が先立ち、門を抜け、玄関の前に立つ。
戸を開けようとした手を、思い出したようにインターホンに持って行く。
ピンポーンと、珍しくない音が玄関の向こうで聞こえたかと思うと、間もなく彼が、この家に現在一人で暮らす松井太郎が現れた。