夏のシュークリーム
第1章 会えない日のお客様
「いらっしゃい」
不機嫌そうに見えるが、彼は顔で損をするタイプであり、決して二人を招かれざる客などと思っているわけではない。
「独り暮らしには大分慣れた?」
「慣れを通り越してやみつきですよ」
「松井さん、これ、良かったらどうぞ」
ミカは松井に紙袋を渡した。
ほんのり、ハニラの甘い香りがする。
「午前中、次郎君と作ったんです」
「次郎君と…」
彼は身の危険を感じた。
もしかしたら、何か良からぬ物が混入されているかもしれない。
次郎なら、やりかねない。
そう疑う根拠があった。以前何度かやられたのだ。
一度目は睡眠薬を。ある冬の日の朝だった。寒いと思って起きたら、何故か身包み全て剥がされ、ベッドにいた。
理由は未だに怖くて聞けていない。
二度目は確かマムシの粉末だった。その時は風邪気味で、口にした後体調は良くなったものの、有り余る自らの精力に自己嫌悪に陥ったのを覚えている。
どちらも思い出す度、背筋に悪寒が走る。
松井の疑いを知ってか知らずか
「大丈夫だよ。ちゃんとミカの言う通りに作ったもん。沢山持ってきたから一緒に食べようよ。」
と次郎は保証した。
「一緒にですか…なら安心です」
但し、ミカがちゃんと目を光らせて、次郎が悪さしないか見ていてくれたのなら。
「あとこれ、マグロとイワシに。」
ネーミングセンスについてはさて置き、マグロとイワシ、二匹はこの家の飼い猫である。
渡された袋を覗くと、中身はちょっとお高いキャットフードの缶詰だった。
「これ、マグロが好きなんてすよ!ありがとうございます。」
こちらには素直に礼を言うと、松井は二人を家の中に招き入れた。
不機嫌そうに見えるが、彼は顔で損をするタイプであり、決して二人を招かれざる客などと思っているわけではない。
「独り暮らしには大分慣れた?」
「慣れを通り越してやみつきですよ」
「松井さん、これ、良かったらどうぞ」
ミカは松井に紙袋を渡した。
ほんのり、ハニラの甘い香りがする。
「午前中、次郎君と作ったんです」
「次郎君と…」
彼は身の危険を感じた。
もしかしたら、何か良からぬ物が混入されているかもしれない。
次郎なら、やりかねない。
そう疑う根拠があった。以前何度かやられたのだ。
一度目は睡眠薬を。ある冬の日の朝だった。寒いと思って起きたら、何故か身包み全て剥がされ、ベッドにいた。
理由は未だに怖くて聞けていない。
二度目は確かマムシの粉末だった。その時は風邪気味で、口にした後体調は良くなったものの、有り余る自らの精力に自己嫌悪に陥ったのを覚えている。
どちらも思い出す度、背筋に悪寒が走る。
松井の疑いを知ってか知らずか
「大丈夫だよ。ちゃんとミカの言う通りに作ったもん。沢山持ってきたから一緒に食べようよ。」
と次郎は保証した。
「一緒にですか…なら安心です」
但し、ミカがちゃんと目を光らせて、次郎が悪さしないか見ていてくれたのなら。
「あとこれ、マグロとイワシに。」
ネーミングセンスについてはさて置き、マグロとイワシ、二匹はこの家の飼い猫である。
渡された袋を覗くと、中身はちょっとお高いキャットフードの缶詰だった。
「これ、マグロが好きなんてすよ!ありがとうございます。」
こちらには素直に礼を言うと、松井は二人を家の中に招き入れた。