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夏のシュークリーム

第3章 賭けには勝てたから

「あれ」

記憶を掘り起こす。確か次郎さんと冴木さんが来て、持ってきたシュークリームを食べて…

「おはようございます」

声を聞いて、松井はとび起きた。

「なんで?!」

橙色の地に白と黄色の菊の柄の着物姿で、咲が松井に向かって微笑んでいる。

「勝手にお邪魔するのはどうかと思ったんですけど…ちょっと待ってて下さいね」
そう言うと、咲は部屋を出て階下に声をかけた。

「松井さん、起きましたよー」
「はーい」
階段を音を立てて上がって来て、ひょっこり顔を出した相手に、松井は怒りを露わにした。

「次郎さんっ!あなたって人はっ! 最後はトリカブトか青酸カリでも盛るつもりですかっ?!」

「ごめんね。でも結果オーライ。」
にっこりと微笑む表情にますます怒りがこみ上げる。

「どこがオーライですかっ!!…園田さんすみません。本当に」

咲に向かって、手を突いて頭を下げる。その様子は、師匠の非礼を詫びる弟子、である。

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