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夏のシュークリーム

第3章 賭けには勝てたから

窓の外、夕方になってやっと出てきた風に揺れている木の葉、キラキラと差し込む西日

リビングのソファでそれらをうっとりと眺めながら、煮立つ鍋から出る湯気の香りに酔う。

「もうすぐですから」
着物姿に白い割烹着を纏った咲が、対面キッチンから松井に微笑みかける。

あー、もし結婚したらこんな感じなのかな…

松井は妄想と現実を重ねた末の、締まらない顔をどうにも出来ず、下を向いた。

「松井さん、大丈夫ですか?動いたから、またアルコールが回ってきました?」
「違うよ、ちょっと嬉しくなっただけ」
「?」
「本当に飯食ったら帰っちゃうの?」
「はい。門限を守らないと、父が凄く怒るので」
「7時?花火大会の日は特別だったんだ。」
「あの日は、おばあちゃんも一緒ということになってて」

咲は嘘をついてしまったことが申し訳ない、というように苦笑する。
「おじいちゃんもなんですけど…」

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