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「再会」と呼べる「出会い」

第8章 その周りの人々

「香田、飯食わねーの?」

「用事があるんだ
 ちょっと行ってくる」

昼休み、俺は友人達にそう告げると
教室を出た。

今日から
あの人がこの学校へ来ている。



「失礼します」

「どうぞー」

調理準備室。
今年度新任の家庭科教師
隠土先生が迎えてくれた。

あの人はいないようだ。

いいか。先に挨拶しとくか。


「三年の香田、だよな?
 どうした?」

あれ…
俺のこと、あの人から聞いてないのか?

「園芸部の部長として
 改めて挨拶させて頂こうと思いまして。
 秋の文化祭では、
 合同で出店させて貰うことになると
 思うので、よろしくお願いします」

「校長先生にも伺ったけど
 いつも料理部に
 野菜を分けて貰ってるんだよな。
 こちらこそよろしく」

隠土先生が微笑む。

…この人だ。

俺はこの顔を知っている。
知っているというか
この人の姿が脳に刻まれている。

「それにしても香田、
 ガタイいぃなぁ。
 鍛えてるのか?」

と、隠土先生が俺の腕を
ポンポン叩いた。

全然、俺の事には気付いていないようだ。

「はい。
 家が代々大工の仕事をやってて。
 手伝う事が多いんもんスから。」

じいちゃんと親父にいつも
こき使われてるからな。
それにまぁ、鍛えてもいる。

「偉いなぁ」

そんな感心されると…
なれてないから照れてしまう。

「料理部の部長の佐伯ミカとは
 幼なじみなんです。アイツ、
 少し抜けてるところがあるから、
 たまに迷惑かけるかもしれませんけど
 よろしくお願いします。」

「そっか、佐伯とは幼なじみか。

 …じゃあ、何か聞いてないか?
 悩んでるとか、困ってるとか」



隠土先生はミカの異変に気付いている。

…会ったばかりなのに。
そういう、人なんだな。

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