テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第8章 その周りの人々

うちの学校の図書室は二階にある。
俺は登って来た階段を駆け足で降りた。
図書室のガラス扉を開け、中に入ると

「香田君、お疲れ。
 慌ててるみたいだけど何かあった?」

司書の松井さんが声をかけてきた。
彼は“仲間”だ。

「あの人、来てます?」

聞きながら、カウンター奥の扉を指す。

「まだ来てないよ。
 いつ来るかと思って、
 ここ空けられないから
 まだ昼飯も食えない。
 その様子じゃ、香田君もまだだろ?
 あの人に何か用事があったの?」

「部活のこと、どうすんのかなって。
 まぁ、あの人の場合参加しなくても
 やり過ごせそうですが。

 一応、都合つけやすいし、
 うちの部にでも誘おうかと。」

「園芸部か。
 隠土先生がいる料理部を選ぶ
 可能性もありそうだけど。
 あそこ、女子多いからね。
 なんか面倒くさそう…」


女子が多いと面倒くさい
なんて言える程モテるって事だから
俺には正直羨ましいが。

けど そうか
だったらミカの所に行ったのも分かる。

「料理部に行きそうっスね。
 俺の幼なじみ、
 あそこの部長なんスけど
 さっき会いに行ったらしくて。
 多分部活の事で行ったのかも。」

「佐伯 さんだっけ? 
 …うん そうだね。
 それもあると思うけど」

松井さんが少し考え込んだ。

「…なんスか?他にもなんか??」

松井さんはあの人との付き合いが
一番長いから、彼の昔の事情についても
俺なんかより詳しい。

「彼女さ、似てるんだよね。
 亡くなった奥さんに。」






「マジ  っスか?!」

あの人、
隠土次朗の奥さんは
五十年位前に亡くなったらしい。

溺愛していた奥さんが亡くなった時の
悲しみようは見ていられなかったと
ある人に聞いた。

その 大切な奥さんにミカが似てる?

… … …


「どこ行ったか探してみようね。
 君も貴重な昼休み、
 ちゃんと休んだ方がいいよ。」

松井さんはそう言うと
手の平に小さな紙をおいた。

触れてもいないのに
それは静かに折り畳まれていく。
やがて、鳥の形になった。

「次朗さんを探して」

…ふわり
と風に舞い上がるかのように飛び、
それは消えてしまった。

“探索”の能力は
風を操る事が出来る松井さんの特殊能力だ。
勿論、一部の人間にしか知られていない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ