テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第8章 その周りの人々

『準備中』の札に愕然とする。

午後三時
原稿が一段落したので
一息入れようと
私は再びこの店を訪れた。

準備中か…
開いていてもいい時間だと思うが。
ラーメン屋のように
昼と夜しかやっていないとか?
この間来た時は…11時だったな。

ま、仕方ない。
待っていても、いつ開店するか
定かではないし…。

私は別の喫茶店へ行くことにした。



あのマスターのコーヒー、
飲みたかったんだけどな…。




ガチャ


一歩踏み出したその時、
店のドアは開いた。

「神鳥さん」

振り返ると、
マスターが『準備中』の札を
『営業中』に換えていた。

「いいですか?」

「どうぞどうぞ」


良かった。
どうやら運が良かったらしい。
今日もマスターのコーヒーが飲める。


中に入ると、既に男性客が1人
カウンターの席に座っていた。

白髪の混じったストレートの髪
前髪が長くて、顔はよく見えない。
黒いタートルネックのセーターに
黒いスラックス、黒い革靴。

そう言えばこの間この店にいた子も
こんな風に真っ黒な出で立ちだった。
次朗くん…だったな、確か。

袖から出た青白い手には
骨がくっきりと浮き出ている。
腰もやけに細い。
というか、全体的に、細い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ