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「再会」と呼べる「出会い」

第9章 温もりバス

「なんだかんだで
 付き合って1ヶ月近く経つだろ?
 その位の時期って
 一番盛り上がってる頃かと思って」

「そんなことないよ。
 昨日なんて別れ話しようとしてたもん
 …あ」


言っちゃった。

「別れ話?」

いっそのこと話してしまおう。
変な心配をかけるよりいいと思う。

「元々ね、一週間だけって
 事で付き合う事にしてたの。
 
 二人で会ったり…していく内にね
 やっぱり合わないっていうか…
 私の方が辛くなってきちゃって。
 
 だから会わないように、
 連絡も取らないようにしてたの。 
 
 ずるいかもしれないけど、
 自然消滅するかなって。
 
 そもそも、すぐ飽きられると
 思ってたし。」

「で?
 結局どうなったんだ?」

「昨日ね、思い切って
 別れて欲しいって言ったの」

「うん」

「…ダメだった」


私にしては
頑張ったと思ったんだけどな…

「ダメって…
 別れて貰えなかったのか?
 どうして ?」

「お母さんがね、
 入院したんだって。
 それで、凄く不安になってて…」

「井崎さんちの奥さん…?
 そんな話、聞かなかったけど」

そっか…
リョウ君のお家、大工さんだから
井崎建設 とは多少関わりがあるんだ。

「最初、風邪をこじらせただけって
 思ってたけど…
 検査したら腫瘍が見つかったとかで。

 大丈夫だったって、
 さっき電話で聞いたけど…」

「え…  何も聞いてない 。
 オヤジかじいちゃんなら
 なんか知ってるかな…」 

嘘…とか?
私、疑心暗鬼になってる…。

「確認してみるよ」

「うん…
 なんか、昨日の今日なのに
 優司くんの態度が
 やけにあっさりし過ぎてるような
 気がして」

「お前、それを理由に
 別れない事を了承したのか?」

「え  …ん うん」

「っとに、流されやすいよな」

「…」

リョウ君が呆れ顔で溜め息をつく。

「仕方ないか。
 お前、情に人一倍もろいしな。
 それが良い所でもあったりすっし。」

「…全然 良くなんてないよ」

「ま、動揺するよな。
 付き合ってる奴のあんな噂…
 けど、会わない方がいいってのは
 変わらねぇ。
 山一、三井はお前の事、
 すごく心配してる。」

「うん」

「それに、隠土先生も」

「へ?」



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