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「再会」と呼べる「出会い」

第10章 文明の利器

「お前んち香田工務店、か。
 うちの会社から受注してんだ。」

優司先輩はつま先で
“香田工務店”と書かれた
灰皿を蹴った。

「…ミカにそれ、話した?」

「これから
 話すつもりです。」

「…黙っててくんねぇかな」

「…」

優司先輩の口元が不気味に笑う。

「頼むよ、香田」

なんだよ、おい。
肩に優司先輩の手が乗る。

「俺、本当にミカの事好きなんだ。
 あいつだって俺の事… 
 こないださ














俺ら思い合ってんだよ。
 だから、な  邪魔すんな」

「……っまえ!!」

頭に血が昇…

ミカ   ミカ   ミカ


……!!!

「っ!! 香田っ!
 てめぇっ っにすんだよっ…!
 お前んちの発注
 他に回してもいいんだぞっ!?」

「…っ!」





握りこんだ優司先輩の襟元を離す。

「ッハぁっ…! てんめっ!!」

 ガシッ


殴りかかってきた拳を
手の平で受け止める。

「…優司先輩、今日は
 帰ってもらえませんか…?」

「なにっ!」

「アンタがミカについた嘘、
 お袋さんの事は黙ってます。」

「あ?  …なんだテメェ
 自分家の家業、そんなに大事か?」

「はい」

じいちゃんのじいちゃんから
ずっと受け継がれて来た大工という家業。
沢山の苦労を経て、やっとの事で
手に入れてきた信用もある。
井崎建設からの受注は少ないとは言え
切られたら、失うものはでかい。
それだけうちはまだまだ弱小で
井崎さんとこは規模がでかいという事だ。


俺の手で香田工務店を潰す事は出来ない。



…つまり
俺がミカを救うことは出来ない。

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