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「再会」と呼べる「出会い」

第10章 文明の利器

「お会計、お願いします!!」

「いいよ、もらったから」

「え 」

私はヤマちゃんとミッチの顔を見た。
二人共不思議そうな顔で首を振る。

「わしからのおごりじゃ」

金髪のオジサンがにっこり微笑んだ。

「人違いしてすまんかった。
 お詫びにごちそうさせてくれ。」

えっ 

「そんなっ、悪いです…!」


「遠慮する方が失礼な場合もあるよ。
 気にしないで
 ごちそうになっちゃいなよ」

背中を向けたまま、
次朗くんが言った。

「…でも」

「ミカちゃん、じゃったのう。
 次朗の事、よろしく頼む。」



…また  だ。


オジサンはそう言うと立ち上がった。


「ぁ…ありがとうございました!」

私達は声を揃えて御礼を言った。


「ではまた、の。」

ニカッ、と明るく微笑むと
マスターと次朗くんに軽く挨拶をし
オジサンは店の奥へと行ってしまった。
出入り口、奥にもあるのかな…。


「ごちそうさまでした。」


「また来てね」

マスターがわざわざドアの所に立って
見送ってくれた。


「さよなら」


別れ際の次朗くんは
なんだかやけにあっさりしていた。


…今日は一緒に帰らないんだ



頭に被さるような
この鬱陶しい感情を
なんとかして振り落としたい。

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