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「再会」と呼べる「出会い」

第12章  イカ祭りの誘惑

「いってらっしゃぁい」

ニヤニヤと次朗さんが手を振る。


「ここは男ばっかだから
 気にしない気にしない」

松井さんの冷めたフォローが温かい。

「香田 ごめんな」

隠土先生…




…はぁ





濁天のトイレは広い。
造り物の観葉植物や
世界の民芸品なんかが飾られている。
店側には貼られていないが
催し物のポスターなんかも貼ってある。


「はぁ…勘弁してくれよ」

ズボンを下着ごと下げ、
便座に腰を下ろす。

俺のナニは無駄に元気だ。



…一応、女とそういう経験が
無いわけではない。
信じて貰えねぇと思うから、
誰にも話してないけどな。



中学三年の時だった。

その時、家に通って来てくれてた
大学生の家庭教師と…


凄く、綺麗な人だった。

その時の俺には
彼女が完璧な存在に思えて
とにかく憧れてた。

部屋に入って、
一緒の机で、
息もかかる程近くて… 

毎回ドキドキしてた。


本志望だった私立特Aの
合格通知が来たとき





『リョウ君
 私からのご褒美、 貰って』










「…っ  ハァ…」




俺にやたらデカい
ご褒美をくれたその日を境に、
彼女は俺の前から姿を消した。

終わった後の、
彼女の思い詰めた表情を見たら
追わない方がいいような気がして

…そのままになっている。


けど、
その後土守の力を継承した俺は
折角受かった私立を蹴り、
現在の、トリ校に入学した。
それは“来る日”の為だ。
自分の判断に、今は後悔はしてない。






「…こんな所で何やってんだよ」

鏡の中の自分は
めっちゃ自己嫌悪の表情だ。

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