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「再会」と呼べる「出会い」

第1章 苦過ぎた初体験

3月半ば
朝晩はまだまだ寒いけど
日中は割と暖かい。
桜の蕾も、大分膨らんでいる。
始業式の頃には満開になるんだろうな。

新しく出来たアイス屋さんは
学校から程近い。
ヤマチャンとミッチは
園芸部の水かけ当番の
帰りだったみたい。

「今日はなんだか暑くって。
 冷たいものが欲しく
 なっちゃったんだよね。
 新しく出来たお店の事も
 気になったし」

「私もずっと気になってた!」

フレーバーは10種類位あった。
チェーン店とかじゃなく
個人営業のお店らしい。
全部手作りなんだって


お店の中にテーブルと椅子もあって
私達はそこで頂いていた。

今日は気温が暑いせいもあってか、
お客さんはひっきりなしに入ってくる。
学校の子にも、何人か会った。
主に女性かカップルだったけど
中には叔父様と呼ぶに相応しいような
初老の男性も来ていた。

その顔になんとなく
見覚えがある気がして
思わず声に耳を澄ませてしまった。

「開店おめでとう。
 当日に来れなくて
 すまなかったね」

「いえいえ…
 お花を送って頂いて
 ありがとうございました
 まさかこんな近くに
 先輩がいらしたなんて…
 しかも喫茶店を
 なさっているとは驚きました。
 洋菓子作りの腕は
 群を抜いてらっしゃったのに
 今は作られていないのですか?」

「私なんて…身に余るよ
 …いやぁ、すっかりコーヒーに
 魅せられてしまってね
 路線変更ってやつさ。
 洋菓子は細々とやってるよ
 店の名前は【濁天】っていうんだ。
 郵便局の路地を右に曲がった所
 少し分かりにくいけど…
 良かったらいつでも来てよ」

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