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「再会」と呼べる「出会い」

第17章 溶ける体温

着替えて、
改めて部屋を見渡す。

百年も前の事を
どうやって覚えてるの?
…って思うかもしれないけど

この部屋は特別

最初にカラスさんと
結ばれたのはこの部屋だった。



物心ついた時から
私は彼のことが大好きだった。

靴の中に芋虫を入れられても、
お気に入りだった帽子に
わざと変な模様を付けられても、
学校の教科書に勝手に
面白すぎる落書きをされても…



からかわれても、
馬鹿にされても、


大好きだった。


何をされても、
カラスさんが
私の事を思ってくれてるって
分かってたから。



一度
長く会えない時間が続いて、
その理由を言ってくれなくて、
もうダメかもって
思った時もあったけど…
それも私のことを想ってくれての
事だった…。



色々、あったんだ。


けどそれは私の前世のお話
またいつか…。

今は…





「帰る?」

「うん」


「…俺はもう少しいたかったな」


「課題しなきゃ
 …だいふ遅くなっちゃったよね?」



この部屋の時計の針は
来たときから
ずっと同じ時間をさしていた。


「五分位だよ」

「え」


そんなわけないよ


三時間位は確実に経ってるはず。



「ここでは時間の流れ方が違うからね
 …だからもう少しいない?」


次朗君が私の肩に腕をまわす。




「… また 今度…」



言いながら
顔から火が出そう。


私だって本当はずっとこうしてたいよ。

でも
いつまでも幸せが続くと
なんだか後が怖い。

贅沢過ぎるような気がして。



「今度  か
 …だね
 俺もなんだか
 幸せに溺れかかってるし」


次朗君が手を差し出す。


「帰ろうか」




私はその手に、
自分の手を重ねた。



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