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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「邪魔しちゃ悪いから
 いいんじゃね? もう」

「…そう ね
いいです 隠土先生
私達もコーヒーを頂いたら
帰ります」

「そうか 悪いな」

一応、かけてはみたものの、
次郎の携帯に
電源は入っていなかった。


「何か伝えておくか?」

「私
明日出国することになったので
ミカに最後にもう一度
謝りたくて」

「明日出国なんて急だな」

「はい 学校には母が
連絡してると思います
父の方の都合で
急に決まってしまって」

「そうか…」

イギリスに留学させるって
あの時父親が言ってたんだよな。


「…」

井崎は黙って
コーヒーを口に運んだ。
見える表情はどこか切なげだった。

二人で話したい事は
奥の部屋で終わらせて来たのか、
言葉のない沈黙が流れる。

井崎も百瀬も、
ただ黙ってコーヒーを飲む。

取り憑かれていたが故の悪行か。
でも井崎も百瀬も、
自分が犯したことは覚えていた。

諸悪の根元である、
ハクアの記憶を
次朗が消した筈であるにも関わらず、
だ。
消した、いや『書き換えた』のか?


「私 お先に失礼します
まだ荷物の整理が終わっていないので」

カップをソーサーに置き、
百瀬が立ち上がった。

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