テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「…さて 頼むよエレミム」

食事を終えた次朗君がエレミムの隣に立つ。
一同、私を含めて固まった。

「次朗さん
 急がなくてもいいんじゃないかな」

マスターが不安そうに次朗君を見る。

「そうですよ
 今まで通りでいいじゃないですか
 特に不便はないはずですよ」

松井先生もいつもの冷静な表情を崩す。

「楽しかったな
 辛いことも沢山あったけど
 でも俺はね 
 この人生満足」

次朗君が、微笑む。


ガチャ

奥の部屋のドアが開き、
ヒョロリと背の高い黒ずくめの男の人が
顔を出した。

「準備ができた 良いかの?」

エレミムが百年前に止めた
次朗君の、カラスの時間を再び動かす。
死なない身体から元の身体へ。

ただし、命の補償は無いに等しい。

何故なら、戻ったところで
その身体は百年生きたものだから。

ここにいるほとんどがそう思っていた。
そして覚悟していた。

月王達は
ミズカの生まれ変わりである
ミカ先輩の存在が、
次朗君の気持ちを留めてくれると
信じていたみたいだけど、
記憶を消してしまった今、
次朗君の生への執着は薄れてしまったようだ。


死の番人でもある、
闇守の王様ダーマさんと
私の前世の父月王が立ち合うと申し出た。

「大丈夫 お前は死なない」

隠土先生が次朗君を見る。

「兄さん ありがとう」

次朗君が隠土先生に微笑み
奥の部屋に入る。
みんなも続いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ