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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「次朗さん 考え直そうよ」

マスターがもう一度涙目で訴える。

「キヨ
 これはずっと決めていたことだから
 今までありがとね
 ウメにもよろしく」

次朗君はマスターに微笑みかけた。


部屋の床には魔法陣のようなものが書かれ
白い光を放っていた。

「月子 赤い石を借りるぞ」

「はい
 …何するの?」

私は月王にネックレスを渡した。

「お楽しみじゃ」

月王は濃い目のウインクを飛ばした。


次朗君が陣の真ん中に立つ。

「えー じゃあみなさ」

次朗君の挨拶をダーマさんが
指で制した。

「そんなものは不要じゃ
 羽根を出せ」

「え」


次朗君は片方しかなくなった
黒い翼を出した。

刹那

「わ」


!!

月王が私から受け取った赤い石を
剣に変えて翼を切り落とした。

は?!!

「ちょ おとうさん?!!」


ビュアッ…

魔方陣が光る。

「エレミム」

ダーマさんに促されたエレミムが 
倒れかけた次朗くんの胸に手を当てる。

胸から出た光が
その手の中に吸い込まれた。

「晴一!」

「はい」

月王に呼ばれ、
隠土先生が掌を前に出すと
あの光の龍が現れて次朗君を包んだ。

キラキラキラキラ

光が身体に吸い込まれていく。
魔方陣の光が一層強くなった。
凄い光景だ。



光が落ち着き、
その中心に見えたのは
キョトンとした表情で座り込む次朗君。

「あれ 俺生きてる」

「だから死なないって言ったろ」

ポン、と隠土先生が次朗君の肩を叩いた。

「じろうさーーん」

松井さんが号泣して次朗君に抱きつく。

「良かったーーー 」

マスターも、また泣いた。

香田先輩も、私も涙が出て来た。

「あれ?」

次朗君は自分の、胸に手を当てた。

「あ」

「次朗 第二の人生じゃ
 謳歌するが良い」

ダーマさんが微笑んだ。


*…*…*…*…*…*…*

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