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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

一睡も出来ずに朝になってしまった。
私は窓から、
徐々に明るくなる空を見ていた。

着替えて、何となく外に出た。
早朝の冷たい空気。
新聞配達のバイクの音。

風がフワリと通った。

「ミカちゃん
 おはよう 早起きだなぁ」

振り返ると
リョウ君のおじいちゃん、
善吉さんが立っていた。

「おはようございます」

「良い朝だな
 空気が澄んどる」

「そうですね」

私は深呼吸をした。
肺から心地よい空気が染み込んでくる。

善吉さんは道の向こうを見つめていた。

「リョウ君 今日もジョギングですか?」

日課で今位の時間に
走っていることは知っていた。

「そうだなぁ
 走り終わって帰って来るところかな
 …」

♪♪♪

善吉さんの携帯電話が鳴った。

「もしも … そうか
 そうか!
 良かった! 良かったな!!

 …お疲れさん…」

お疲れさん、
そう言った善吉さんの目から涙が溢れた。

ゴツゴツした手で、豪快に涙を拭うと

「皆に知らせんとな
 ではの ミカちゃん」

「はい」

善吉さんは足早に家に戻った。

善吉さんが見つめていた道の向こうを、
私も見つめた。

何かが終わったのだ、
何かがうまくいった、
何かが
誰かが帰って来る。

胸の鉢巻石に触れたら、
少し暖かい気がした。
そこに私ではない、
誰かの体温を感じる。

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