テキストサイズ

BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

出会いは…とても単純なものだった。

『あ…よ、よろしくねっ!!』

『あぁ…』

それが、彼との出会い。
人見知りが激しい僕の挨拶は、とてもぎこちなくて…
彼は、僕の言葉に頷いただけだった。

『おい、一颯!!』

友達に呼ばれ、席を離れた彼。
その時に、名前を知った。

『いぶき君かぁ…』

カッコいいな…と思ったのを覚えてる。

その日は、高校の入学式のリハーサルがあって…
初めて顔を合わせるクラスメイトは、みんな緊張した表情を浮かべていた。

だけど、彼は…一颯君は、教室の入り口辺りで、友達と、数人のクラスメイトと楽しそうに話していた。

その笑顔がとても綺麗で…

目が離せなかった。

『詩音、何見てるんだ?』

なんて、ずっと一颯君を見ていたら、中学からの友達である一柳 右京(いちやぎ うきょう)が、不思議そうに僕の顔を覗き込んできた。

『あの人。』

『……どれ?』

まだ楽しそうに友達と話している一颯君を指差すと、京ちゃんは視線を僕が指差している方向へ向けた。

『綺麗だなって思ってさ。』

『………たしかに。 女子が放っておかなさそうだな。』

あ、そっか。 男の僕から見てもカッコいいんだから、女の子はもっと気になるのか。

『席着けー。 出席取るぞー。』

『あ、じゃあまた後でな。』

担任の先生が入ってくると、みんな自分の席に戻っていく。

『…………』

一颯君も、席に…僕の隣に戻ってきた。
一番後ろの、窓際の席。

『えー…これから体育館に…』

『……………』

その日は、僕らの間に会話はなかった。




これが、最初の出会い。
まあ、普通でしょ?

別に、その時はカッコいい人だな…という認識だけだった。

変わったのは…そう。
初めてのHRの時間だったかな?

『今日は、委員決めるぞー。 4月10日…4+10=14ってことで、14番…九重。 前に出て進行役やってくれ。』

ええ~!?
む、無理だよぉ…人見知りだし、人前に出るのとか、緊張しちゃって無理!!

『ほら、さっさとしろ。』

『………は、はい…』

そんなこと、先生に言えないし…

もう、半分泣きそうになりながら、教壇に上がった。

『じゃ、よろしく。』

そう言って、先生は教室出て行っちゃったし…

『……っ…』

京ちゃん、助けて~!!

ストーリーメニュー

TOPTOPへ