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「詩音!!!!」

「っ!!!?」

走り出してすぐに、一颯君に腕を掴まれてしまって…
結局、逃げ出すこともできなかった。

「いぶ…」

「本当なのか？」

「……ぇ？」

振り返ると、一颯君はとても真剣な顔をしていて…
涙で視界がぼやけている僕には、怒っているように見えた。

「は、はなっ…は、なして…ッ…」

一颯君に怒られたくなくて…これ以上嫌われたくなくて、僕は一颯君の腕を振りほどこうとしたんだけど、放すどころか、余計に力を強くしてきた一颯君。

「お願…っから、はな…ッ…放しっ…」

「詩音。」

「っ…!!」

一颯君は、腕を振りほどこうと半分パニックになって暴れている僕の頬に手を添え、これ以上にないくらい優しい声で僕の名前を呼んだ。

「本当なのか？」

いつもと同じ、優しい声。　優しい微笑み。　僕に触れる優しい手。

どうして…そんなに優しい声で僕に話しかけるの？　どうして、そんなに優しい微笑みを僕に向けてくれるの？　どうして…

「ぅっ…ぅ…ッ…」

「しお…」

そんなに優しく、僕に触れるの？　僕のこと迷惑なんでしょ？　なのに、どうして…？
僕、バカだから…勘違いしそうになっちゃうよ…

「ひッ…ふぇ…ごめっ…な、さ…ッ」

一颯君の質問に答えないといけないのに、正直に僕の気持ちを伝えたら、本当に嫌われてしまう気がして……怖くて怖くて、さっきよりも涙は溢れてくるし、僕の口から出てくるのは謝罪の言葉ばかり。
わかってる。　ここまできたら、正直に気持ちを伝えるしかないって。　でも…これ以上一颯君に嫌われてしまうのが、怖くて仕方ない。　なんて言えばいいのか、わからない。

「ごめん、なさっ…い…ッ…ひ…ぅっ…」

「……詩音。　俺のこと、好き？」

もう、本当に…本当に号泣しながら、僕は一颯君の言葉に何度も頷き、謝罪の言葉を繰り返した。

「んっ…ぅん…ッ…好きっ…ご、め…ん…ッ……なさ…っ」

そんな僕を見て、嫌がる顔をすると思っていた一颯君は……少し照れたように、嬉しそうに微笑むと、怒るどころか僕を抱きしめてきた。
僕、頭真っ白。　何が起きてるのか理解できず、一颯君の腕の中で硬直。
びっくりしたせいで、あんなに溢れていた涙も止まった。