テキストサイズ

BL~中編・長編集2~

第14章 ~番外編③~

「ただいま~。」

「…おかえり…なさい…」

靴を脱いで部屋に上がり、少し恥ずかしそうにしている幸を抱きしめる。

「ただいま、幸。」

「チュッ」と短いキスをして、凍えそうなくらい寒い玄関から部屋に移動する。

あれから二、三週間……毎日、「行ってきます」と「ただいま」のキスをするようになっていた。
今でこそ安心して帰って来られるけど、最初の一週間は幸がいなくなるんじゃないかと、気が気じゃなかった。 毎日急いで帰って来ては、玄関にある幸の靴を見て安心する。
そんな生活を繰り返していた。

「いい匂いだな。」

幸は、最近料理を作ってくれてるんだ。
まあ、一日家にいるわけだし、暇つぶしには丁度いいかなって。
最初のうちは、目玉焼きとか本当に初歩的なものしか作れなかったんだけど、最近は少し上手くなってきていて、簡単なものなら作れるようになっていた。
って言っても、まだまだ手つきは危なっかしいんだけど。

「今日は何作ってくれたんだ?」

「……カレー…」

うん。 まあ、わかってたよ。 家に入る前から、匂いしてから。

「おおー。 うまくできてんじゃん。」

「………」

キッチンに入り、鍋の蓋を開けると、一気にカレーの匂いが強くなった。
途中までかき混ぜるのを忘れていたのか、若干焦げが浮いている。

「……ちょっと…失敗した…」

「初めて作ったからな。 上手くできなくて当然だから、そんな落ち込むな。 次に作る時は、時々かき混ぜるのを忘れるなよ?」

「……ん。」

ちょっと落ち込んでいる幸の頭を撫で、とりあえず着替えと荷物を置きに部屋に入った。
俺が着替えてる間に、幸がカレーをよそって持ってくる。

「いただきます。」

「……いただきます。」

スプーンを口に運ぶ俺を、心配そうにじっと見つめてくる幸。
焦がしたのを気にしているようだ。

不安そうな表情も可愛く見えちゃうって、どんだけ幸が可愛いんだよ、俺。
いや、もちろん、嬉しそうにしてる幸が一番可愛いんだけど。

なんて考えながら、カレーを口に含む。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ