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BL~中編・長編集2~

第14章 ~番外編③~

「? 幸…?」

「…………」

ぎゅうっと強く抱きついてくる幸。 明らかに、様子がおかしい。

どうしたんだ? 急に、こんな…

「どうした?」

「…ッ……」

優しく頭を撫でながら尋ねても、俺に強く抱きついたまま、離れようとしない幸。
こんな状態になったのは初めてで……どうすればいいのかわからなくなった。

「っ……ッ…」

「!!」

そのうち…幸が小刻みに震えているのに気が付いた。 しかも……泣きながら。

「幸……帰るか…?」

「……んっ…」

俺に強く抱きつきながら…はっきり頷いた幸。
たぶん、相当怖いことがあったんだ。 幸をこんな状態にまで追い込む何かが。

なんだか俺も怖くなり、一刻も早く家に帰ることにした。

別に寒さで震えているわけではない幸に俺の上着をかけてやり、幸の肩を抱きながら足早に駅に向かう。
外を歩いている間、幸は俺にピッタリと寄り添い、下を向いて、やっぱり震えながら歩いていた。 まるで、誰にも見つからないように、怯えて隠れているようだった。

「外寒かったろ? 先に風呂に入って来いよ。 俺、飯作っとくから。」

家に着き、とにかく少しでもいいからリラックスしてくれればと思い、幸に風呂を勧めてみても、幸は頑なに俺から離れようとしない。
まるで、あの日のようだ。 幸とはぐれてしまった、あの日の…

「……い…っしょに…入り…た、い…ッ…」

「…………」

違ったのは、風呂に誘ってきたのが幸だったってこと。

いや、驚いたことは驚いたよ。 当然だろ? 幸から風呂に誘ってくるなんて、夢にも思ってなかったから。
でも…

「……いいよ。」

同時に、言いようのない不安が押し寄せた。 今日、そんなに不安なことがあったのか…?
幸がこんなに怯えているのを見るのは、初めてだった。

「ほら、洗ってやるから。」

「…ん……」

不安そうな幸の頭と体を洗ってやり、自分の体も素早く洗って、一緒に湯船に入った。
そして、初めて一緒に風呂に入ったあの日のように、後ろから幸を抱きしめてやった。

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